平成21年度 養成講座 初日講義より [前編]

みなさん、こんばんは。私は函館中途失聴者・難聴者協会の「てれ」です。

「函館中途失聴者・難聴者協会」という言いにくいので
「中失協」と呼んでいます。皆さんにもそう呼んでいただければと思います。

「中失協」は、聴覚障害者、主に「難聴者」や「中途失聴者」が集まり
福祉向上を目指して活動しています。

ですから、会員の私は聴覚障害者で、音声の情報がわかりにくい人です。
それで講師を担当するには通訳が必要です。

今回の講座では聴覚障害者がいつ見学に来られても良いように
また、受講生の方々に実際の要約筆記を感じてもらいたい。
と考え、パソコンによる要約筆記をつけています。

要約筆記とは本来は私が「話した言葉」を、手書きやキーボードで
スクリーンに投影し「書き言葉」にする同時通訳なのですが
事前に話す原稿がある場合は今日のようにテキスト文書にして
文字を流す方法もあります。これも立派な情報保障です。

本題に入ります。
私が担当するテーマは「聴覚障害者の基礎知識」「聴覚障害者と社会」
です。 お手元にあるテキストに講義内容が書かれてあるので、テーマに
沿ってお話進めます。

まず「聴覚障害の種類」についてお話しします。 

人間の耳の仕組み・働きというのは、「資料1」を見ていただくと、だいたい
解ります。 皆さんは「難聴」と聞いてどういう状態を想像するでしょうか。
普通に聞こえている人なら「耳が遠い」のを連想されると思います。

でも、実際には単純な障害ではなくて大別して3つの種類に区分されます。

1つ目は「伝音性難聴」といって、これは「耳が遠い」というイメージで良い
です。 この難聴の場合は大きめの声でゆっくりハッキリ話してあげると
割と聞き取れる方が多いようで、補聴器も効果的のようです。
ただ、補聴器に向かって大声で話すのは、音がガンガン響くだけで
逆効果ですので注意が必要です。

2つ目は「感音性難聴」といって、奥にある内耳や聴神経部分が侵される難聴
です。 これは非常にやっかいなもので、健聴の人にはなかなか理解しにくい
です。 簡単にと言うと、 『音』として聞こえるが、『言葉』として聞き取れないもの
です。 専門的には「語音認識」できない状態といいます。 なので、補聴器は
あまり有効でないことが多いようです。

今は、デジタル式補聴器といわれる比較的高度の感音性難聴者にも有効な
ものも出てきていますが、 それでも「フィッティング」といわれる調整作業を
何度も繰り返し、それでもなかなか聞き取りにくいです。

3つ目は「伝音性難聴」と「感音性難聴」の両方にまたがる「混合性難聴」で
そうなると補聴器もほとんど役に立たず、音をいくらか「ひろっている」
ような状態になります。

難聴者の多くは「感音性難聴」や「混合性難聴」ということで
健聴者の方が想像されている「難聴」のイメージとはかなり異なってきます。

難聴と言っても、人間が一人一人違うように、千差万別で補聴器をつけた
だけで聞こえるわけではないことをまず理解していただきたいと思います。

私の場合ですと、他の音が同時に発生している場合や早いスピードの言葉。
例えば酒席の雑談や歌の歌詞、最近のマンザイは言葉がわかりませんし
音量を上げてもわからないのであきらめています。

意外と思われるかもしれませんが、難聴者の多くは「静かな世界」に生きて
いるので多彩な音が蔓延している環境を苦手とする場合が多いのではないか
と思います。

次に、中途失聴者・難聴者の分類についてお話しします。

「中途失聴者」は、人生の途中で事故や薬害・病気・ストレスから
突然あるいは序々に失聴していった人たちのことでどちらかというと途中で
高度難聴になった人のことを言います。
音声言語を獲得した後に失聴される方が多く、ほとんどの人は全く聞こえなく
ても言葉を話すことが出来ます。

「難聴者」とは、生まれつき難聴の人や人生の途中から軽度~重度の難聴に
なった人たちで補聴器で会話が出来る人から、わずかに聞こえる人まで
様々です。

「音」が目には見えないように、聴覚障害も外見からはわからない障害です。
客観的に見て中途失聴者か難聴者かはわかりませんし聴力レベルでは
決まりません。

まして、周りが決めつけるものでなく、その人が自分は難聴者だというので
あればそうですし、 中途失聴者だというのであればそうです。

この分類分けの定義というか基準はとてもあいまいです。最終的には
「その人が自分自身をどう思っているか」というアイデンティティの問題に
なります。

私は、強く意識してるわけではありませんが生まれつきの難聴者だと思って
います。

次に中途失聴者・難聴者が普段どういった環境で生活し、心理状態で
いるのかをお話ししたいと思います。

配布しました「資料2」をご覧になってください。聴覚障害者がどういった
状況で職場や家庭で過ごしているかを図にしています。
点線で囲ってある部分は聴覚障害者には聞こえていない部分です。
この図のように聴覚障害者には、健聴者なら普通に意識しなくても
耳に入ってくることが「聞こえていない」ということがわかるかと思います。

「聞こえていない」ということは、周りの状況がわからないということです。
周りからの情報や状況がわからないと職場などでは孤立してしまいます。
どうしても、対人関係が難しくなります。

話したい気持ちがあっても、おかしなタイミングで話しかけたくないから
無口になっていってしまったり、話しかけられても良く聞こえない、聞こえ
難いため笑ってごまかしてしまいます。「微笑みの障害」なんていわれます。
なんだか悲しい言葉だな思います。

家庭でさえも、その人の聞こえの理解がないと上手くコミュニケーションが
取れません。母子なら何となくわかるんじゃないの?とはいかないんです。

だから、聴覚障害とはコミュニケーション障害とも言える訳です。
先ほどから繰り返していますが、聴覚障害というのは目に見えないので
健聴者や一般社会には理解されにくいものです。

中途失聴者・難聴者は健聴者とほぼ同様に話せますし、場所により聞き
取れる音と聞き取れない音があったりで、 余計に理解されにくいかもしれ
ません。

ろう者同士の場合は、手話を使って円滑に話し合うことが出来ますが
手話のわからない健聴者との場合は 意思の疎通が困難になります。

軽・中度の難聴者同士で1対1なら補聴器と音声で対応できる場合もあり
ます。これは場所や体の状態にもよります。

高度難聴者でも手話の出来る人はいますが相手の難聴者も手話が出来る
とは限りませんし、中途失聴者の場合は読話、「口を読む」ということですが、
それも一朝一夕にはできません。

難聴者と言っても「聞こえ」さまざまですから、中途失聴・難聴者は
可能な限り複数のの補聴手段を駆使して、コミュニケーションを図ろうと
します。これをトータルコミュニケーションと言います。

しかしながら、多くの中途失聴者・難聴者が集まって会議などをするときは
ホワイトボードなどに代わる代わる発言 を書かなければなりません。
これでは時間がかかるので、そこで要約筆記通訳者に
OHPやパソコンで通訳してもらったりします。

そう考えると、要約筆記通訳がいかに中途失聴者・難聴者にとって
大切かということがわかっていただけると思います。

後編へつづく

※この内容は、講義された方よりいただいた原稿を、本コンテンツ用に
 体裁を再編したものです。